前書き
このニュースレターでは、2019年7月の会社法に関する主要な規制の動向に関する最新情報を取り上げています。
(a)インド準備銀行(RBI)が発行した、対外商業借入に関する最終用途制限緩和に関する通達
(b)2019年会社法改正
(c)会社法審判所(NCLT)は、取り決めのスキームを検討している間のみ監督管轄権を有するとしたMadras高等裁判所の判決
(d)インド企業省(MCA)が発行した、e-Form BEN-2の変更に関しての通達
(e)RBIが発行した、インド外国為替法に基づく外国の負債および資産の年次報告を提出するための、Webベースのオンラインポータルの導入に関する通達
各規制の動向について、下記をご覧ください。
外部商業借入(ECB)に関する最終用途制限の緩和
外部商業借入(ECB)は、適格借主であるインド居住者が、認定貸主であるインド非居住者から行う商業ローン/借入です。ECBを通じて調達された資金については、最終使用制限が適用されます。ECBフレームワークは、ECBが適格な借り手の外国資本保有者から調達された場合とECBの最低平均償還期間が5年であった場合を除いて、運転資本、一般企業目的、およびルピー貸付返済のためのECB使用を制限していました。さらに、資金使途についても上記活動のための転貸しを目的とするECBは制限されていました。2019年7月30日に、RBIはECBフレームワークを自由化するため、ECBに適用される最終使用制限の一部を緩和しました。
RBIはECBフレームワークを修正し、適格借主が認定貸主(インドの銀行の海外支店/海外子会社を除く)からECBを調達することを許可しました。
1.すべての認定借主は、運転資本および一般的な企業目的のために、最低平均償還期間10年でECBを調達できます。さらに、ノンバンク金融会社(NBFC)は、運転資本および一般的な企業目的の貸し出しのために、最低平均償還期間10年でECBを調達できます。
2.すべての認定借主は、資本支出のために国内で利用されるルピーローン返済のために、最低平均償還期間7年のECBを調達することができます。さらに、NBFCについても、資本支出のために国内で利用されているルピーローン返済のために、最低平均償還期間7年でECBを調達することができます。
3.すべての認定借主は、資本支出以外の目的で国内で利用されているルピーローン返済のために、最低平均償還期間10年でECBを調達することができます。さらに、NBFCについても、資本支出以外の目的で国内で利用されているルピーローン返済のために、最低平均償還期間10年でECBを調達することができます。
4.すべての認定借主は、special mention account – 2または不良資産に分類されている場合でも、製造およびインフラ部門の資本支出のためのルピーローン返済のためのECBを、国内で利用可能することができます。
2019年会社法(改正)
2018年11月2日から2019年7月31日まで、インド大統領は2013年会社法の特定の改正を施行する条例を発行していました。条例は、インド議会によって可決されるまで、一時的に有効です。2019年会社法(改正)第2条例(2019年第2条例)は、会社法に関して施行されている最新の条例であり、正式な改正により会社法に組み込まれない限り、2019年8月に失効する予定でした。 これに伴って、2019年7月31日、インド議会は、2019年第2条例の規定と会社法の新たな改正を取り入れるため、2019年会社法の改正案(改正法)を可決しました。
改正規定を以下にまとめました。
1. 2019年第2条例のための会社法の改正を以下に示します。これら改正は2018年11月2日から将来に渡って効力を持ちます。
(a)NCLTの権限移譲
改正法は、NCLTが持つ下記特定の権限を中央政府へと移譲しています。
(X)国外に持株会社/子会社/関連会社を持つインド企業の会計期間の変更申請についての決定権限
(Y)公開会社から非公開会社への変更を承認する権限
ただし、NCLTで現在審理中の上記事項に関する事案については、引き続きNCLTによって処理されます。
(b)事業開始
企業は、企業登録局(Registrar)に対して、会社定款に記載のあるすべての者が、所定の金額全額を支払ったことを確認するための申告書を法人設立後180日以内に提出する必要があります。企業は、申告書を提出せずに事業を開始したり借入を行ったりすることはできません。また、企業は、事業所登録証明についても企業登録局に提出する必要があります。
規定に違反した場合、企業は50,000インドルピーの罰金を受ける責任を負い、全ての役員は、期間に応じて、1,000インドルピー以上10,000インドルピー未満の罰金を受ける責任を負うものとします。さらに、企業登録局には、会社定款に記載のある加入者が所定の金額を支払っておらず、申告書を提出していない場合に、会社名簿から会社名を削除する権限が与えられています。
(c)会社の登録事業所
企業登録局は、会社の登録事業所について、実際に事業や運営を行っていないと考えられる場合に実地調査を行う権限を与えられました。また、会社が設立から15日以内に事業所登録を行わない場合、会社登録簿から会社を削除するための措置を開始する権限についても与えられています。
(d)課金記録簿
企業登記局への課金記録の登録は、最大60日以内(以前は300日以内)に行われるようになりました。改正はまた、登記局は規定の従価料金の支払いから60日以内に追加の登録を許可する場合があると規定しています。加えて、故意に誤った情報を提供したり、料金の登録に関して必要な重要な情報を提出しなかった場合、会社法に基づき、不正行為に対する処罰の責任を負うこととなります。
(e)会社法の各種規定に基づく罰則の改正
規定: 改訂された罰則
割引価格での株式の発行に関する規定違反: 規定に違反した会社および役員は、発行価格と500,000ルピーのいずれか低い額の罰金が科されます。さらに、会社は、株式発行日から年利12%ですべての金額を株主に払い戻す責任も負います。改正により、罰金額が増加し、禁固規定は削除されました。
資本金の変更に関する提出失念または遅延: 規定に違反した会社および役員は、提出までの期間に応じて最大500,000ルピーの罰金が科されます。改正により、罰金額が固定されました。
会社法に規定された年次申告書の提出失念または遅延: 規定に違反した役員は、50,000ルピーの罰金が科され、さらにその後も提出がない場合、期間に応じて最大500,000ルピーの罰金が科されます。改正により、罰金額が増加し、禁固規定は削除されました。
会社法第117条(1)に基づく合意書の提出失念: 規定に違反した会社は、100,000ルピーの罰金が科され、さらにその後も提出がない場合、期間に応じて最大2,500,000ルピーの罰金が科されます。また、規定に違反した会社清算人を含む全ての役員は、最大500,000ルピーの罰金が科される可能性があります。改正により、罰金額が減額されました。
上場会社の年次株主総会に関する報告書の提出不履行: 規定に違反した会社は、100,000ルピーの罰金が科され、さらにその後も提出がない場合、期間に応じて最大500,000ルピーの罰金が科されます。また、規定に違反したすべての役員は、最大25,000ルピーの罰金が科され、さらに期間に応じて最大100,000ルピーの罰金が科されます。改正により、罰金額が増額されました。
財務諸表の写しの提出不履行: 規定に違反した場合の罰金が100,000ルピーに修正されました。さらに、未提出が続く場合には、期間に応じて最大500,000ルピーの罰金が科されます。改正により、罰金が増額され、禁固規定は削除されました。
取締役識別番号(DIN)の提出不履行: 規定に違反した会社および役員は、25,000ルピーの罰金が科され、さらに期間に応じて最大100,000ルピーの罰金が科されます。改正により、罰金額が増加しました。
取締役の任命、複数DINの取得禁止、DINの通知義務等に関する手続違反: 規定に違反した個人または会社の取締役は、最大50,000ルピーの罰金が科され、さらに規定違反が続く場合、一日毎に500ルピーの罰金が科されます。改正により、禁固規定は削除されました。
主要管理職(KMP)の任命に関する規定違反: 規定に違反した会社は500,000ルピーの罰金が科され、取締役およびKMPは50,000ルピーの罰金が科されます。さらに、規定違反の期間に応じて、最大500,000ルピーの罰金が科されます。改正により、罰金額が増加しました。
報酬上限規定の不遵守: 会社の場合は500,000ルピーの罰金、個人の場合は100,000ルピーの罰金が科されます。改正により、会社への罰金が追加され、個人への罰金額が変更されました。
詐欺: 改正により、罰金額が1,000,000ルピーと会社の売上高の1%の内いずれか低い金額、および悪質なものに関しては最大5,000,000ルピーまで引き上げられました。
総会通知に添付される声明に関する会社法第102条違反: 規定に違反したプロモーター、ディレクター、マネージャーその他KMPは、50,000インドルピーまたは生じた利益の5倍の額のいずれか高い金額の罰金が科されます。改正により、罰金の額が固定されました。
代理人に関する声明の総会通知への不添付: 規定に違反した役員には、5,000ルピーの罰金が科されます。改正により、罰金の額が固定されました。
監査人の会社および登記局への辞任通知の不提出: 規定に違反した監査人は、最大で50,000ルピーの罰金が科されます。さらに、その後も提出がない場合、期間に応じて最大500,000ルピーの罰金が科されます。改正により、罰金額が増額されました。
株式譲渡を含むスキームの申し出及び回覧の未登録: 規定に違反した取締役には、100,000ルピーの罰金が科されます。改正により、罰金額が固定されました。
所定の制限を超えた会社役員としての勤務: 規定に違反する個人には、違反が続く限り、1日当たり5,000ルピーの罰金が科されます。改正により、罰金額が増額されました。
事業、資産、株式の譲渡等に関連した退職取締役に対する支払い: 規定に違反した取締役には、100,000ルピーの罰金が科されます。改正により、罰金が増額されました。
(f) 複数回の規定違反に対する罰金
罰金が科された日から3年以内に、再度会社法規定違反があった場合、通常科される額の2倍に相当する額が罰金として科されます。
(g)特定犯罪への規制強化
地方管区長は、会社法第441条に基づく罰金の制限額を引き上げることにより、犯罪に対する規制を強化することができます。ただし、その額は2,500,000ルピーを超えないものとします。
(h)罰則の裁定
改正前は、審判官は会社および役員の規定違反に対して、罰則を課す権限がありました。改正により、審判官には、コンプライアンス違反に関しても罰則を課す権限が付与されました。また、審判官は、コンプライアンス違反を行った会社、役員等に対して、必要に応じて欠陥を是正するよう指示することもできます。これに合わせる形で、審判官の指示に従わなかった場合に適用される罰則の対象が、審判官が指示を出した者にまで拡大されました。
2.2019年第2条例で追加された会社法の修正については、以下の通りです。これら改正は、インド政府の通知の日から施行されます。
(a)目論見書に記載すべき事項
改正に伴って、目論見書記載事項、書面による同意等の規定が省略されました。
(b)ペーパーレスでの株式の公募
公開会社は、株式の発行をペーパーレスで行う必要がありました。改正により、この要件は規定された他の企業にまで拡張されています。
(c)目論見書の虚偽記載に対する民事責任
改正により、目論見書の虚偽記載に対する民事責任の例外において、「目論見書の写しの登記官への提出」という文言が「目論見書の写しの配送」という文言へと修正されました。
(d)重大な影響力を有する保有者の登録
会社に対して、会社に重要な影響力を有する保有者を特定し、会社法第90条の規定に従うことを要求する義務が追加されます。さらに、中央政府には、重要な影響力を有する保有者の登録規則を作成する権限も与えられています。
(e)国家財務報告機関に関する規定
改正により、国家財務報告機関は特定の部門を通じてその機能を実行できるようになりました。6か月から10年の間、任命または評価の実行を禁止することができます。
(f)企業の社会的責任(CSR)
会社に求められるCSR支出額は、直近会計年度の純利益の平均2%以上です。未使用CSRの金額は、会計年度終了から6か月以内に、規定された基金へと移さなければなりません。未使用の金額が進行中の事業において使用されている場合、unspent CSRと呼ばれる特別な科目を作成する必要があり、会計年度終了後30日以内に資金を移転し、さらに3年以内に支出しなければなりません。違反した場合、会社は50,000インドルピーから2,500,000インドルピーまでの罰金を科せられ、役員は3年以下の懲役および/もしくは50,000インドルピーから500,000ルピーまでの罰金を科せられます。
(g)重大詐欺捜査局による企業の事務調査(SFIO)
改正により、中央政府は、SIFOによって提出された中間報告書または調査報告書に会社内の不正行為が明らかな場合、会社の財産、現金または資産等で不当な利益を得ている個人について、NCLTに資産、現金、または資産の開示を申請することができるようになりました。さらに、申請上で、そのような詐欺に対して無制限に個人の責任を追求することもできます。
(h)電子形式での申請書、書類、検査などの提出に関する規定
改正により、登記局は、申請書、書類、検査などの提出に関連する規定に基づく目論見書を電子形式で登録する必要がなくなりました。
(i)弾圧に関連した人物の適格性
改正により、中央政府は、弾圧の場合の救済のための処置をNCLTにおいて審議することのできる権限を与えられました。また、特定の弾圧の場合、中央政府はそのような抑圧に関係する人物が、会社の役員としてふさわしい人物であるかどうかを決定するため、NCLTに申請して審議することができます。さらに、NCLTにより適格でないと宣言された個人は、NCLTの命令の日から5年間、取締役またはその他の会社の行動および管理に関連するその他事務所等を保持してはなりません。上記に関連して取締役の職または会社の業務の運営および管理に関連する他の職務から解任された個人については、失業に関連する補償を受ける権利を有しません。
NCLTは、the scheme of arrangementについての審理中は、監督管轄権のみを有する
事例:Assistant Commissioner of Income Tax対Dalmia Power Limited and Ors.
判決日:2019年7月4日
概要:
NCLTは、Dalmia Power Limited and Ors.(被告)と、その株主の間のthe scheme of arrangementを承認していました。被告は、承認されたスキームに従って修正申告書を提出する必要がありました。
Assistant Commissioner of Income Tax(上訴人)は、修正申告書を提出する前に、被告は1961年所得税法に基づく遅延容認申請をする必要があると主張しました。しかし、被告は、このスキームはすでにNCLTによって承認されているため、修正申告書を提出するために遅延容認申請を行う必要はないと主張しました。被告は令状請願書を提出し、上訴人は、命令受理日から12週間以内に2015-16および2016-17の被申立人の査定を完了するよう指示されました(異議決定)。
異議決定がなされた上訴人は、Madras高等裁判所に書面にて上訴を行い、高等裁判所は、
NCLTの決定を棄却し、以下のように述べました。
1. NCLTは、the scheme of arrangementについて検討している間は、上訴管轄権ではなく、監督管轄権のみを行使します。NCLTは、スキームが合法的な契約であるかどうかを確認するためにのみスキームを検査し、その他詳細については確認しません。
2. 2013年会社法第230条(5)に基づくと、法定当局は申告書および修正申告書のみを考慮することになり、承認されたスキームの授権条項には影響しません。
3.申告書および修正申告書は、法定の手順に従って提出する必要があり、法定当局は法律に従って独立して実態を決定できます。
したがって、被告は、修正申告書を提出するための正規の手順に従うよう命じられました。
インド企業省(MCA):FORM BEN-2-「重大な影響力を有する保有者の申告書」の修正
MCAはForm No. BEN-2を修正しました。2018年会社法(重大な影響力を有する保有者)規則4および2013年会社法第90条(4)に基づき、すべての会社は、重大な影響力を有する保有者の申告書と名前、住所、その他の詳細等について、会社登記局(ROC)にForm BEN-2にて変更することが義務付けられています。会社は、重大な影響力を有する保有者の申告書受領日から30日以内に、ROCにForm No. BEN-2を提出する必要があります。
新たなForm No.BEN-2では、特に以下の詳細が必要です。
(i)重要な影響力を保持している方法(株式、議決権、分配可能な配当に対する権利、支配または重要な影響など)
(ii)メンバーおよび重要な影響力を有する保有者の詳細
Form BEN-2への変更を考慮して、提出期限は2019年9月30日まで延長されました。
インドの会社が報告する外国債務および資産の年次報告書のためのオンラインポータルの導入
インドの外国為替法では、外国直接投資を受けた、および/または海外投資を行ったインドの会社は、毎年7月15日までに、RBIに対して外国債務および資産(年次報告書)を提出する必要があります。
年次報告書は、インド企業がRBIに電子メールベースのレポートシステムを通じて提出されていました。このシステムは、2019年6月28日からオンラインポータル(参照するにはこちらをクリック)に置き換えられました。
改訂された外国債務および資産情報報告システムの主な特徴は次のとおりです。
1.報告企業には、RBIから「ユーザー登録フォーム」を送信するためのWebポータルインターフェイスが提供されます。Webポータルへの登録が成功すると、提出されたデータのシステム駆動検証チェックと共に、RBIから外国負債および資産提出ゲートウェイを使用するためのログイン名とパスワードを受け取ります。
2.報告企業は、会計年度ごとに投資家ごとの直接投資およびその他の財務詳細を報告する必要があります。すべての報告企業は、以前は子会社にのみ必須であった外国関連貿易統計関連変数に関する情報についても提供する必要があります。
3.報告企業は、オンラインポータルで送信された情報を修正、表示、ダウンロードできます。
4.報告企業は、電子メールでの確認後、過去分の年次報告書を提出できます。
ポータル上で年次報告書を提出しない場合、1999年外国為替管理法違反として扱われることに留意してください。