はじめに
インドの防衛産業は、重要な転換期を迎えています。インド政府の「アートマニルバール・バーラト(Aatmanirbhar Bharat:自立したインド)〔注2〕」政策を基軸として、同分野においては輸入依存の低減と、グローバルに競争力のある国内防衛産業基盤の構築を目的とした包括的な政策改革が進められています。2025~26年度には、インドの装備取得予算の約75%に相当する111,544クロールルピー(約116億3,000万米ドル)〔注3〕が、国内産業からの調達に限定して割り当てられています。過去10年間で、防衛輸出は34倍に成長しており、2013~14年度の686クロールルピー(約7,151万米ドル)から、2024~25年度には23,622クロールルピー(約24億6,000万米ドル)へと増加しました。政府は2029年までに防衛輸出を50,000クロールルピー(約52億1,000万米ドル)に引き上げることを目標としています。【参考:https://pib.gov.in/PressReleaseIframePage.aspx?PRID=2114546】
インドの防衛部門への参入を規定する法制度は多層的です。防衛製造に関する産業ライセンス(Industrial Licence)は、1951年産業(開発および規制)法[Industries (Development and Regulation) Act, 1951]および1959年武器法(Arms Act, 1959)に基づき管理されています。防衛産業に対する外国投資は、1999年外国為替管理法(Foreign Exchange Management Act, 1999)および2019年外国為替管理(非債務性金融手段)規則 [Foreign Exchange Management (Non-Debt Instruments) Rules, 2019]により規制されており、現在、外国直接投資(Foreign Direct Investment)は自動承認ルート(Automatic Route)で最大74%、政府承認ルート(Government Approval Route)では最大100%まで認められています。軍による調達は、2020年防衛調達手続(Defence Acquisition Procedure 2020)に基づいて行われます。また、軍需品の輸出は、2023年外国貿易政策(Foreign Trade Policy 2023)に基づくSCOMET制度により管理されています。
本資料は、インドの防衛部門への参入、投資、事業運営または輸出を検討するインド企業および外国企業が直面する主な規制上・商業上・手続上の質問に対して、FAQ形式で回答するものです。本資料は、2026年5月時点で施行されている主要な法律および政策文書を参照して作成されています。
セクションA:製造およびライセンス
Q1. インドにおける防衛関連製品の製造を規制する法制度の枠組みはどのようなものですか?
インドにおける防衛関連製品の製造は、多層的な法制度の枠組みにより規制されています。
- レイヤー1:1959年武器法(Arms Act, 1959, “Arms Act”)および2016年武器規則(Arms Rules, 2016, “Arms Rules”)は、武器および弾薬の製造、販売、取得等を規制する;
- レイヤー2:1951年産業(開発および規制)法[Industries (Development and Regulation) Act, 1951, “IDR Act”]に基づき、政府が告示する防衛製品リスト[Defence Products List、2019年シリーズ通達第1号(Press Note No. 1 2019 Series)の附属書Iに掲げる製品]に該当する防衛製品を製造するには、産業ライセンス(Industrial Licence)が必要である。当該ライセンスは、産業・国内取引促進局(Department for Promotion of Industry and Internal Trade, “DPIIT”)により付与される
- レイヤー3:製造に係る個別の条件、とりわけ保安およびコンプライアンスに関する条件[2025年認可防衛産業保安マニュアル(Security Manual for Licensed Defence Industries, 2025, “SMLDI”)に基づく要件を含む]は、防衛省(Ministry of Defence, “MoD”)傘下の防衛生産局(Department of Defence Production, “DDP”)により規定される.
これらの法制度により、告示されたライセンス対象カテゴリーに該当するインドの武器・防衛製造業者に対する規制枠組みが定められています。
Q2. 1951年産業(開発および規制)法[Industries (Development and Regulation) Act, 1951]に基づき、産業ライセンス(Industrial Licence)が必要な防衛製品はどれですか。また、1959年武器法(Arms Act, 1959)に基づきライセンスが必要な防衛製品にはどのようなものがありますか?
これら2つのライセンス制度は、それぞれ告示に基づく異なる製品カテゴリーに区分されます。IDR法(IDR Act)に基づく産業ライセンスは、2019年シリーズ通達第1号[Press Note No. 1 (2019 Series)]の附属書Iに記載された製品の製造に必要です。対象には、軍用航空機、軍艦、戦車、ミサイル、防衛用途の特定の電子・通信システムなどが含まれます。武器法(Arms Act)に基づくライセンスは、附属書IIに記載された武器および弾薬の製造・実射試験(Proof Testing)に必要です。したがって、製造を開始する前に、メーカーは自社の製品を該当する告示付属書と照合する必要があります。
Q3. 防衛製品リスト(Defence Products List)とは何ですか。また、製造業者のライセンス要件はどのように定めるられるのでしょうか?
防衛製品リスト(Defence Products List)とは、2019年シリーズ通達第1号[Press Note No. 1 (2019 Series)]に基づきインド政府が告示するリストで、IDR法(IDR Act )のもとで産業ライセンス(Industrial Licence)が必要な防衛製品を特定し、当該ライセンスの所管当局を指定するものです。同リストに明示的に列挙された製品は、産業・国内取引促進局(DPIIT)が処理します。このリストに掲載された製品を製造する場合、製造者はIDR法に基づき産業ライセンスを取得する必要があります。リストは製造対象の製品カテゴリーを明確に規定しており、製造者は自社製品が該当するかを確認してライセンスを申請する必要があります。
Q4. 防衛製造に係る産業ライセンス(Industrial Licence)および武器ライセンス(Arms Licence)はどの当局が付与し、どこで申請するのでしょうか?
IDR法に基づく産業ライセンスの申請は、国家単一窓口システム(National Single Window System, “NSWS”)ポータルを通じてオンラインで行われ、申請は所管当局である産業・国内取引促進局(DPIIT)により処理されます。
武器法(Arms Act)に基づくライセンスは、内務省(Ministry of Home Affairs, “MHA”)の権限のもとで付与されます。DPIITは当該権限のもとで、2019年シリーズ通達第1号[Press Note No. 1 (2019 Series)]の附属書IIに明示的に記載された製品の製造に関するライセンス手続きを所管します。対象には戦車、装甲戦闘車両、および特定の重火器や関連防衛装備が含まれます。附属書IIに含まれない製品、たとえば小火器や関連弾薬については、引き続き内務省(MHA)の管轄下でライセンスが管理されます。
NSWSポータルは、複数の省庁にまたがる事業開始前の承認手続きを一元化しており、インド国内における防衛製造事業者にとって単一の申請窓口となっています。
Q5. 防衛製造ライセンスの有効期間は何年間ですか。また、更新や変更の手続きはどのように行われますか?
IDR法(IDR Act)に基づき付与された産業ライセンス(Industrial Licence)は、発行日から15年間有効であり、取得者は当該期間内に生産を開始しなければなりません。なお、この有効期間はさらに3年間延長可能です。
武器規則(Arms Rules)によれば、武器法(Arms Act)に基づく武器および弾薬の製造ライセンスは、無期限で付与されます。ただし、取得者は当該ライセンスの付与日から7年以内に製造施設を設置し、生産を開始することが条件となります。
設置能力の変更、新製品の追加、発起人または取締役の変更などの実質的な変更(material change)がある場合には、既存のライセンスに対する正式な変更手続き(amendment)が必要となります。変更申請はNSWSポータルを通じて行われ、提案された変更が既存ライセンスの範囲外となる場合にのみ、新たなライセンスが必要となります。
Q6. ライセンスなしで製造可能な防衛製品はありますか?ある場合、どのカテゴリが免除対象となりますか?
あります。防衛関連製品の部品、構成品および附属品の製造については、産業ライセンス(Industrial Licence)や武器ライセンス(Arms Licence)は不要です。ただし、これらの項目が2019年シリーズ通達第1号[Press Note No. 1 (2019 Series)]の附属書Iまたは附属書IIに明示的に列挙されている場合はこの限りではありません。したがって、同通達の付属書に明示的に含まれていない防衛関連製品の部品および付属品については、ライセンスなしで製造することが可能です。ただし、小火器(small arms)の製造にはこの適用はなく、引き続き武器法(Arms Act)に基づき規制されます。
Q7. 防衛製造ライセンス(Defence Manufacturing Licence)に基づき生産を開始する前に、どのような書類および条件を満たす必要がありますか?
防衛製造ライセンスは、ライセンスおよび適用される法令で定められた生産開始前の条件を満たすことを前提として、製造を許可するものです。生産を開始する前に、ライセンス取得者は、法令上必須の承認を取得する必要があります。これには、2020年労働安全衛生・労働条件法典[Occupational Safety, Health and Working Conditions Code, 2020 ※1948年工場法(Factories Act, 1948)を統合]および2026年労働安全衛生・労働条件(中央)規則[Occupational Safety, Health and Working Conditions (Central) Rules, 2026]に基づく事業所登録、ならびに1981年大気(汚染防止管理)法[Air (Prevention and Control of Pollution) Act, 1981]および1974年水質(汚染防止管理)法[Water (Prevention and Control of Pollution) Act, 1974]等の環境法令に関連する環境許認可(Environmental Clearances)が含まれます。さらに、ライセンス取得者は、SMLDIに定められたライセンスの一部としてのセキュリティ条件にも従う必要があります。
Q8. 1959年武器法(Arms Act, 1959)または1951年産業(開発および規制)法[Industries (Development and Regulation) Act, 1951]に基づく有効なライセンスなしで防衛品を製造した場合、どのような刑事罰が科されますか?
武器法(Arms Act)に基づき、ライセンスなしで武器または弾薬を製造した場合、7年以上の懲役に処せられます。さらに、製造が禁止武器(Prohibited Arms)や禁止弾薬(Prohibited Ammunition)に関わる場合には、刑罰が強化され、10年以上の懲役が科されます。いずれの場合も終身刑に及ぶことがあり、あわせて罰金が科されます。
IDR法(IDR Act)に基づき、必要な産業ライセンスを取得せずに防衛関連品を製造した場合、またはライセンス条件に違反して製造した場合は、25ラークルピー(約26,000米ドル)〔注3〕以下の罰金が科されます。
セクションB:防衛部門における外国直接投資(FDI)
Q9. インドの防衛部門における外国直接投資(FDI)の現行許容限度はどの程度ですか?
インドでは、防衛分野における外国直接投資(Foreign Direct Investment, “FDI”)は、自動承認ルート(Automatic Route)により最大74%まで認められています。74%を超え100%までのFDIは、政府承認ルート(Government Approval Route)に基づき認められ、この場合、最新技術へのアクセスが見込まれる場合やその他の理由により承認されます。
Q10. 防衛分野における外国直接投資(FDI)における自動承認ルート(Automatic Route)と政府承認ルート(Government Approval Route)の違いは何ですか。また、それぞれどのような場合に適用されますか?
自動承認ルートでは、外国投資家は防衛分野への投資に際して、インド政府またはインド準備銀行(Reserve Bank of India, “RBI”)の事前承認を取得する必要はありません。一方、政府承認ルートでは、投資が成立する前に所管当局を通じてインド政府の事前承認を取得する必要があります。政府承認ルートは、防衛企業へのFDIが74%を超える場合、または投資によって特に機微な技術や最新技術へのアクセスが伴う可能性がある場合に適用されます。防衛分野への外国投資は、内務省(MHA)による保安承認(Security Clearance)および国防省(MoD)のガイドラインに従う必要があります。
Q11. 外国投資家がインドの防衛企業に投資する前に満たすべき条件および取得すべき保安審査(Security Clearance)は何ですか?
防衛部門における外国直接投資(FDI)は、内務省(MHA)による保安審査を必須とし、国防省(MoD)が発行するガイドライン、特に国家安全保障および機微技術の取扱いに関する規定を遵守する必要があります。被投資会社は、製品の設計および開発において自立していること(Self-sufficient)が求められ、またインド国内で製造される防衛製品について、製造・保守およびライフサイクルサポート(Lifecycle Support)のための設備を維持しなければなりません。防衛分野への外国投資は、国家安全保障の観点から審査の対象となり、インド政府は、国家安全保障に影響を及ぼす、またはそのおそれがあるいかなる投資についても、見直しを行う権限を留保します。
Q12. インドの防衛会社が外国直接投資(FDI)を受け入れる場合、履行すべき報告義務はありますか?
あります。インドへのすべてのFDIは、2019年外国為替管理(非債務性金融商品に関する支払方法および報告)規則[Foreign Exchange Management (Mode of Payment and Reporting of Non-Debt Instruments) Regulations, 2019]に基づき、定められた期限内にインド準備銀行(RBI)へ報告する必要があります。また、防衛分野特有の義務として、外国投資に起因して既存ライセンス保有者の所有権または株式保有構造(Shareholding Pattern)に変更が生じた場合には、その変更について30日以内に国防省(MoD)へ報告する必要があります。
Q13. 外国法人は、インドにおいて防衛製造のための完全子会社(wholly-owned subsidiary)を設立することができますか。また、その場合にはどのような条件が適用されるのでしょうか?
はい。外国法人は、インドにおいて防衛製造のための完全子会社[100%外国直接投資(FDI)]を設立することができます。ただし、これは74%の自動承認ルート(Automatic Route)の上限を超えるため、政府承認ルート(Government Approval Route)のもとでのみ認められます。このような提案は、国防省(MoD)の所管部門によって審査され、内務省(MHA)による保安審査(Security Clearance)が必須の前提要件となります。たとえ100%外国所有であっても、企業は有効な産業ライセンス(Industrial Licence)を保有する必要があり、すべての製造・供給活動は、インドにおける防衛ライセンス取得者に適用される使用目的条件(End-Use Conditions)、セキュリティプロトコル、監査要件、および報告義務に従って行わなければなりません。
Q14. インドの防衛企業の株式を外国人または外国法人が譲渡する場合、どのような制限が適用されますか?
インドの防衛企業の株式のいかなる外国人への譲渡も、2019年外国為替管理(非債務性金融商品)規則[Foreign Exchange Management (Non-Debt Instruments) Rules, 2019, “NDI Rules”]により規制されます。NDI規則(NDI Rules)は、インド居住者により、またはインド居住者から非居住者に対するインド企業の株式(equity instruments)の譲渡を規律しています。株式譲渡により所有または支配権の変更(change in ownership or control)が生じる場合には、これはFDIとして取り扱われ、事前の政府承認が必要となります。さらに、外国株主を含む二次的譲渡(secondary transfers)は、居住者から非居住者への譲渡であるか、非居住者から居住者への譲渡であるかを問わず、NDI規則に基づく価格決定ガイドライン(pricing guidelines)、課税および送金条件を遵守しなければなりません。くわえて、防衛分野への外国投資は、内務省(MHA)による保安承認(Security Clearance)の対象であることが明確に定められています。
さらに、インド会社の基本定款(Articles of Association)および該当するライセンス(産業ライセンスまたは武器ライセンス)は、特に所有権または支配権の変更を伴う場合には追加的な譲渡制限を課すことがあり、いかなる株式譲渡も完了前にこれらの内容を慎重に確認する必要があります。
セクションC:防衛調達およびDAP 2020
Q15. 2020年防衛取得手続(Defence Acquisition Procedure 2020)とは何ですか。また、その主な目的は何でしょうか?
2020年防衛取得手続(Defence Acquisition Procedure 2020, “DAP 2020”)は、国防省(MoD)により発行され、インド軍によるすべての調達を統括する枠組みです。2020年10月1日に施行され、従来の輸入依存型で取引中心の調達モデルから、戦略的な国産化(strategic indigenisation)および国内能力の開発に重点を置く枠組みへと大きく転換されました。DAP 2020の主要な目的は、国内調達を促進し、国産設計・開発(indigenous design and development)へのインセンティブを付与するとともに、調達プロセスの透明性と予測可能性を向上させることです。これはインド政府の「アートマニルバール・バーラト(Aatmanirbhar Bharat:自立したインド)」〔注2〕および「メイク・イン・インディア(Make in India)」〔注4〕の各構想と整合しています。その後、国防省はDAP 2020の包括的見直しを開始し、2026年2月には「2026年防衛取得手続案(Draft Defence Acquisition Procedure 2026, “DAP 2026”)」を公衆意見募集のために公開しました。現時点ではDAP 2026は正式に通知されておらず、DAP 2020が引き続き現行の枠組みとして運用されています。
Q16. 2020年防衛取得手続(Defence Acquisition Procedure 2020)における調達カテゴリーにはどのようなものがあり、どのような優先順位で適用されるのでしょうか?
DAP 2020は、国内製造を優先する調達カテゴリーの階層が定められています。優先順位が高い順に、カテゴリーは以下のとおりです。
- Buy (Indian – Indigenously Designed, Developed and Manufactured):インド国内設計・開発・製造による調達(Indian-IDDM);
- Buy (Indian):国産による調達
- Buy and Make (Indian):一部国産化を伴う調達
- Buy (Global – Manufacture in India):海外製だがインド国内で製造する調達
- Buy (Global):海外調達.
Q17. 「Buy (Indian-IDDM)」カテゴリーとは何ですか。また、その適格要件は何でしょうか?
Buy (Indian-IDDM)は、DAP 2020における最優先の調達カテゴリーです。このカテゴリーは、インド国内ベンダーから調達され、かつ国内で設計・開発・製造された製品に適用されます。Buy (Indian-IDDM)カテゴリーに適格とされるためには、製品が最低50%の国産化率(Indigenous Content, “IC”)〔注6〕要件を満たす必要があります。ここでいうICとは、税金や関税を除いた契約金額に対して算出される、契約金額に占める国内調達分の割合を指します。
DAP 2020は、設計および開発が国防研究開発機構(Defence Research and Development Organisation, “DRDO”)との協議のもと、またはDRDO自身によって実施され得ることを認めており、さらに要求情報(Request for Information, “RFI”)の策定および国産設計に関する主張の検証においてDRDOが関与する仕組みを定めています。
Q18. 「Buy (Global – Manufacture in India)」カテゴリーとは何であり、「Buy and Make」カテゴリーとはどのように異なりますか?
DAP 2020におけるBuy (Global – Manufacture in India)調達カテゴリーは、防衛装備品を外国ベンダーから購入したうえで、装備品全体または特定の部品、サブシステム、アセンブリ、スペア部品および関連整備施設について、インド国内での製造を義務付けるものです。これらの国内製造は、インド子会社、合弁会社(joint venture)またはインドの生産機関(Indian Production Agency)を通じて行う必要があります。また、最低50%の国産化率(IC)要件が適用されます。
本カテゴリーは、Buy and Make (Indian)カテゴリーとは異なります。Buy and Make (Indian)は、外国のオリジナル機器製造業者(Original Equipment Manufacturer, “OEM”)からの技術移転契約(transfer of technology)に基づき、インド国内で国産生産を行うものであり、初期段階において外国OEMから完全完成状態の装備品を取得する場合と、取得しない場合のいずれも含みます。これに対し、Buy (Global – Manufacture in India)カテゴリーは、インド国内での製造を前提に、外国ベンダーが直接参加することを認める点に特徴があります。
Q19. DAP 2020に基づくメイク手続(Make Procedure)とは何ですか。また、インド企業はMake IおよびMake IIの各プロジェクトにどのように参加できますか?
DAP 2020で定められたメイク手続は、既製品(off-the-shelf)では入手できず、インド国内での開発が必要な防衛装備品、システム、プラットフォームの国産設計・開発を促進することを目的としています。Make-Iのもとでは、開発プロジェクトは政府資金により実施され、国防省(MoD)が承認された開発費用の最大70%まで資金を拠出します。参加企業は競争プロセスを通じて選定されます。Make-IIは、開発費用は全額企業負担ですが、開発が成功し、所定の要件を満たした場合には、政府が製品を調達することを約束します。インド企業は、各プロジェクトの構成、参加資格、カテゴリー分け、選定手続など、DAP 2020に定められた手続きに従って、サービス本部(Service Headquarters, “SHQ”)やMoDが開始・進行するMake-IおよびMake-IIの各プロジェクトに参加することができます。
Q20. インド企業は、防衛調達のベンダーまたはサプライヤーとしてどのように登録することができますか?
DAP 2020では、防衛調達のための中央集約型のベンダー登録制度は設けられていません。したがって、ベンダーとの関係構築および管理は、調達主体および要求内容の性質に応じて、複数のレベルで行われます。DAP 2020に基づく資本取得(Capital Acquisitions)については、インド企業は中央のベンダーデータベースを通じてではなく、各サービス本部(SHQ)が開始するRFI、提案依頼書(Request for Proposal, “RFP”)およびプロジェクトごとの選定手続きなど、個別の調達プロセスに参加することになります。
ヒンドゥスタン・エアロノーティクス社(Hindustan Aeronautics Limited)、バーラト・エレクトロニクス社(Bharat Electronics Limited)、BEML社(BEML Limited)、マザゴン・ドック造船所社(Mazagon Dock Shipbuilders Limited)などを含む防衛公共部門企業(Defence Public Sector Undertakings, “DPSU”)による調達および下請供給(sub-supplies)については、各DPSUが独自のベンダー登録ポータルおよび資格認定プロセスを設けており、サプライヤーは各DPSU固有の調達に参加するために、それぞれのプロセスを完了させる必要があります。
輸入代替および国産化(indigenisation)の機会については、DDPが運営する「防衛輸入国産化支援(Support for Indigenisation of Defence Imports, “SRIJAN”)ポータル」が主要なプラットフォームとなっています。同ポータルでは、DPSUおよび各SHQが発出する国産化必須品目リスト(Positive Indigenisation Lists, “PIL”)〔注7〕および関連する関心表明(Expressions of Interest, “EOI”)が公開されており、インド企業は国内供給機会の特定および獲得についてこれらを活用することができます。
Q21. 防衛輸入国産化支援(SRIJAN)ポータルとは何ですか。また、インド産業界にどのような機会をもたらすのでしょうか?
SRIJANは、防衛生産局(DDP)が防衛省(MoD)のもとで設置した公式の国産化支援ポータルであり、防衛調達における「Make in India」の機会を促進することを目的としています。同ポータルでは、防衛公共部門企業(DPSU)およびサービス本部(SHQ)が国産化対象として特定した品目が公開されており、特に現在輸入されている品目、または将来的に輸入が予定されている品目が中心となっています。ポータル上の各品目には、品目の概要、国産化を希望するDPSUまたはSHQの名称、および国産化の段階または目標時期に関する情報が掲載されています。インド企業[中小零細企業(Micro, Small, and Medium Enterprises, “MSME”) や新規参入企業を含む]は当該ポータルに登録し、特定の品目に対して関心を表明するとともに、既定の調達手続きを通じて関係するDPSUまたはSHQと直接連携することができます。
DDPがMoDのもとで発出する国産化必須品目リスト(PIL)に基づき通知された品目は、SRIJANポータル上で公開され、産業界に対して可視化されます。これによりインドの製造業者は、所定の期限経過後に輸入が禁止される品目や、段階的に国内調達へ移行する品目について情報を得ることができます。
セクションD:輸出、SCOMETおよび対外貿易政策
Q22. SCOMETリストとは何ですか。また、防衛品およびデュアルユース品(dual-use items)のどのカテゴリーを対象としていますか?
特殊化学品・生物剤・材料・装置・技術(Special Chemicals, Organisms, Materials, Equipment and Technologies, “SCOMET”)は、インドの国家輸出管理リストであり、2023年対外貿易政策(Foreign Trade Policy, 2023, “FTP 2023”)のもとで商工省外国貿易総局(Directorate General of Foreign Trade, “DGFT”)が所管し、インド貿易分類(調和制度)[Indian Trade Classification (Harmonised System), “ITC (HS) Code”]に基づき通知されています。本リストは、インドの国際的な不拡散義務に沿って、ソフトウェアおよび技術を含むデュアルユース品、軍需品(munitions)および核関連品目の輸出を規制するものです。SCOMETリストはカテゴリー0から8までで構成されており、核物質および関連装置、毒性化学物質、微生物および毒素、特殊材料および材料加工装置、カテゴリー0以外の核関連装置(カテゴリー4)、航空宇宙システムおよび推進技術、軍需品リスト(Munitions List、カテゴリー6)、ならびに電子機器、コンピュータ、通信、情報セキュリティ、センサー、レーザー、航法、航空電子機器、海洋、航空宇宙および推進技術(カテゴリー8)を対象としています。
Q23. SCOMET品目の輸出許可はどの機関が付与していますか。また、適用される手続きはどのようなものですか?
SCOMET品目の輸出許可は2023年対外貿易政策(FTP 2023)に基づき規制されており、申請手続きは2023年手続便覧(Handbook of Procedures, 2023, “HBP 2023”)に定められています。HBP 2023によれば、許可当局はカテゴリーごとに異なります。商工省外国貿易総局(DGFT)はSCOMETカテゴリー1~5、7および8の許可当局である一方、カテゴリー0(核関連品目)およびSCOMETリストの品目特定注記(Commodity Identification Note)に掲げられる品目については、原子力庁(Department of Atomic Energy)が許可を付与します。さらに、カテゴリー6(軍需品リスト)については防衛生産局(DDP)が防衛省(MoD)のもとで許可を付与しますが、サブカテゴリー6A007および6A008については引き続きDGFTの許可権限のもとにあります。
HBP 2023によれば、輸出者は所定のアーヤット・ニルヤット様式(Aayat-Niryat Forms、ANF-10シリーズ等)に基づき、DGFTのSCOMETポータルを通じてオンライン申請を行うことが求められています。また、カテゴリー6(軍需品リスト)品目の場合には、防衛生産局(DDP)が運営する防衛輸出促進ポータル(Defence Exports Promotion portal)を通じて申請を行う必要があります。申請にあたっては、当該品目の詳細な技術仕様、SCOMET分類、最終用途および最終使用者の詳細情報、仕向国、ならびに一般にエンドユーザー証明書(End-User Certificate)として知られる最終用途・最終使用者証明書(End-Use-cum-End-User Certificate, “EUC”)〔注9〕を含む書類を提出しなければなりません。なお、原則として手作業による提出は不要とされていますが、必要に応じてEUCの原本または法的誓約書(legal undertakings)の提出については例外的に求められます。
申請は、HBP 2023に定められたガイドラインおよび考慮すべき要素に従い、DGFT本部における省庁間ワーキンググループ(Inter-Ministerial Working Group)の枠組みのもとで審査されます。SCOMETリスト上の品目、技術またはソフトウェアの輸出許可申請は、とりわけ、輸出品目の最終用途に関する評価、受領国(recipient State)において導入されている輸出管理措置、輸出品目がテロリストまたはテロ集団等の手に渡るリスクの評価、ならびにインドが締約国または参加国となっている関連する二国間または多国間の協定および枠組みの規定を考慮して審査されます。これには、ワッセナー・アレンジメント(Wassenaar Arrangement)、ミサイル技術管理レジーム(Missile Technology Control Regime, “MTCR”)、オーストラリア・グループ(Australia Group)および原子力供給国グループ(Nuclear Suppliers Group, “NSG”)等が含まれ、これらは随時改正され得ます。
Q24. 輸出にあたり防衛生産局(DDP)の異議なし証明書(No Objection Certificate)はどのような場合に必要で、どのように取得できますか?
SCOMETカテゴリー6(軍需品リスト)に該当する品目については、輸出に際して防衛生産局(DDP)、防衛省(MoD)による承認が必要とされています。2023年手続便覧(HBP 2023)によれば、DDPはカテゴリー6品目の指定許可当局であり、輸出は同局が定める適用ガイドラインおよび標準作業手順書(SOP)に従って発行する輸出許可(export authorisation)に基づく場合に限り認められます。この承認は一般に異議なし証明書(No Objection Certificate, “NOC”)〔注10〕と呼ばれます。ただし、カテゴリー6品目に関しては、NOC、輸出許可および輸出ライセンスはいずれもDDPが発行する同一の許可を指す用語上の異なる呼称であり、SCOMET許可とは別個または追加的に要求されるものではありません。
NOCの申請は、防衛輸出促進ポータルを通じてオンラインで行われ、輸出予定の詳細として品目の説明、技術仕様、外国の買主、申告された最終用途および最終使用者、ならびに所定の最終用途・最終使用者証明書(EUC)およびDDPのSOPに基づき要求されるその他の添付書類を提出する必要があります。申請はDDPが国家安全保障および外交政策の観点から審査します。カテゴリー6品目について、DDPが発行する有効な許可なく輸出を行うことは、1992年外国貿易(開発および規制)法[Foreign Trade (Development and Regulation) Act, 1992, “FTDR”]に違反する行為となり、該当する場合には武器法(Arms Act)にも抵触することになります。
Q25. 所定の許可なくSCOMET品目を輸出した場合、どのような刑事上および行政上の制裁措置が科されますか?
SCOMET品目について所定の輸出許可なく輸出を行うことは、1992年外国貿易(開発および規制)法[Foreign Trade (Development and Regulation) Act, 1992]およびこれに基づき制定された2023年対外貿易政策(FTP 2023)ならびに2023年手続便覧(HBP 2023)に違反することとなります。1992年外国貿易(開発および規制)法に基づき、当該輸出を行った者、これを幇助し、またはこれを企てた者は、10,000インドルピー(約104米ドル)〔注3〕以上の罰金にくわえ、物品・サービス・技術の価値(いずれか高い方)の5倍以下の金銭的罰則(monetary penalty)に処される可能性があります。さらに、当該貨物(関連する梱包物および輸送手段を含む)は没収の対象となり、市場価格に相当する追徴金(redemption charges)の支払いにより、例外的に解除が認められることがあります。また、輸出入者コード(Importer-Exporter Code)は、当該罰金が支払われるまたは徴収されるまでの間、停止される可能性があります。
当該無許可輸出が、大量破壊兵器(Weapons of Mass Destruction)またはその運搬手段(delivery system)に関連する物資、機器または技術に係る場合には、2005年大量破壊兵器およびその運搬手段(違法行為の禁止)法[Weapons of Mass Destruction and their Delivery Systems (Prohibition of Unlawful Activities) Act, 2005, “WMD Act”]が適用される可能性があります。特にWMD法に基づく無許可輸出に対する罰則は段階的に定められており、初回有罪判決の場合には、30万インドルピー以上200万インドルピー以下(約3,127米ドル~20,850米ドル)の罰金が科され、再犯の場合には6か月以上5年以下の拘禁および罰金が科されます。
Q26. 防衛輸出におけるエンドユーザー証明書(end-user certificate)の要件はどのようなものですか?
最終用途・最終使用者証明書(EUC)または最終使用者誓約書(End-User Undertaking)とは、輸出品目の最終仕向地および使用目的を確認するための政府発行の保証的性質を有する文書であり、通常、再輸出禁止(non-re-export)および転用禁止(non-diversion)に関する誓約を含みます。インドの防衛輸出については、EUCの提出要件は、防衛生産局(DDP)が防衛省(MoD)のもとで発出する標準作業手順書(SOP)において明示的に規定されており、SCOMETカテゴリー6(軍需品リスト)に該当する品目の輸出に適用されます。当該SOPは、政府または軍事用途における最終使用を伴う輸出についてEUCの提出を義務付けており、これには完全装備品、機微品目、部品および構成品、ならびに技術・ソフトウェア・サービスの移転が含まれます。特定の場合、特に完全装備品、機微品目および技術移転については、輸出許可または異議なし証明書(NOC)の付与条件として、輸出先国または最終使用者国の政府により署名・押印されたEUCの提出が求められます。さらにSOPは、EUCについて輸出前および輸出後の双方において検証を行う権限を認めています。
Q27. インドの輸出管理制度を規律している国際的義務にはどのようなものがありますか?
インドの輸出管理制度は、MTCR、ワッセナー・アレンジメント(Wassenaar Arrangement)、オーストラリア・グループ(Australia Group)およびNSGのガイドラインおよび管理リストを含む主要な国際輸出管理レジームへの関与を通じて規律されています。2023年対外貿易政策(FTP 2023)に基づき、これらの国際的義務はインドのSCOMET制度を通じて実施され、統制対象品目の性質に応じて、商工省外国貿易総局(DGFT)、防衛生産局(DDP)その他の権限を有する当局が関与するカテゴリー別の省庁間ライセンス制度として運用されています。
Q28. インド企業は外国政府との政府間防衛供給スキームに参加することができますか。また、その場合に適用される手続きはどのようなものですか?
インド企業は外国政府が関与する防衛輸出に参加することができますが、政府側の制度として確立された政府間(government-to-government, “G2G”)防衛供給スキームが明示的に制度化されているわけではありません。むしろ防衛輸出は、防衛省(MoD)による輸出促進制度の枠組みを通じて実務上支援・促進されています。
G2Gは主要な防衛輸出において、ますます選好される手段となっています。G2Gの取り決めは防衛省(MoD)を通じて調整され、インド輸出入銀行(India Exim Bank)は通常、適切な場合において融資支援を提供しています。このモデルは、南アジア、アフリカおよび東南アジアにおける友好国へのインドの防衛輸出において成功裏に活用されてきました。たとえば2021年2月、輸出入銀行はモーリシャス共和国政府との間で、インドからの防衛品調達のために1億米ドルの信用供与枠(Line of Credit)を提供する契約を締結しました。当該契約に基づく輸出入銀行による信用供与の総額のうち、契約価格の少なくとも75%に相当する物品およびサービスは、売主によりインドから供給されるものとされています。
G2Gの機会に関心を有する企業は、防衛生産局(DDP)およびMoDの輸出促進室(Export Promotion Cell)を積極的に関与すべきであり、同室は在外インド公館との連携による対外働きかけを調整しています。
セクションE:政府スキームおよび産業機会
Q29. iDEXスキームとは何ですか。また、その資金提供の申請資格を有するのは誰ですか?
防衛卓越性のためのイノベーション(Innovations for Defence Excellence, “iDEX”)は、インド政府により承認された防衛生産局(DDP)および防衛省(MoD)のスキームであり、2021年に展開され、防衛および航空宇宙分野におけるイノベーションおよび技術開発の促進を目的としています。iDEXの枠組みは2018年のDefExpo において正式に発表されており、防衛イノベーション機構(Defence Innovation Organisation, “DIO”)を通じて実施されます。iDEXは2021~22年度から2025~26年度にかけて498.8クロールルピー(約5,200万米ドル)〔注3〕の予算的支援のもとで運営されています。DIOの枠組みのもとで約300社のスタートアップ/MSME/個人イノベーターおよび約20の連携インキュベーターに対し資金的支援を提供することを目的としています。本スキームの目的は、スタートアップ、MSME、個人イノベーター、学術機関および研究開発機関が、インドの防衛および航空宇宙エコシステムに応用可能な国産かつ革新的技術を開発できる環境を構築し、自立化および国産化目標の推進に資することです。本スキームのもとでは、選定された申請者は、機能試作の開発または防衛インド・スタートアップ・チャレンジ(Defence India Start-up Challenges)等の構造化された課題メカニズムを通じて特定された既存技術の製品化のために、1申請者あたり最大1.5クロールルピー(約156,371米ドル)の助成金(grant funding)を受け取ることができます。当該資金は、厳格にマイルストーンベースで分割支給されます。
iDEXスキームに基づき、「プロトタイプおよび研究の始動支援(Support for Prototype and Research Kickstart)」の枠組みのもとで資金提供を申請する資格を有するのは、以下の事業体です。
- DPIITにより定義および認定されたスタートアップ企業
- 2013年会社法(Companies Act, 2013)に基づき設立されたインド企業[主として2006年MSME法(MSME Act, 2006)に定義されるMSME]
- 個人イノベーター(研究機関および学術機関を通じて申請されるものを含む)
Q30. ADITIスキームとは何ですか。また、適格なイノベーターに対して付与される助成金の上限はいくらですか?
iDEXによる革新的技術開発の推進(Acing Development of Innovative Technologies with iDEX, “ADITI”)は、防衛生産局(DDP)および防衛省(MoD)の防衛卓越性のためのイノベーション(iDEX)枠組みのもとで、防衛イノベーション機構(DIO)を通じて実施されるサブスキームです。ADITIは、既存のiDEXスキームでは対応が困難な高額投資を要する重要かつ戦略的な防衛技術分野におけるイノベーションを促進するために導入されました。本スキームは、2023~24年度から2025~26年度までの期間において総額750クロールルピー(約7,819万米ドル)の予算支援を受けており、国家安全保障上極めて重要でありながら国内に既存能力が存在しない約30件の重要かつ先端的な技術の開発支援を目的としています。「重要かつ戦略的(critical and strategic)」に分類される技術には、衛星通信アプリケーション、高度サイバー技術、自律型兵器システム、半導体技術、人工知能、量子技術、高度水中監視システムなどが含まれます。
ADITIのもとでは、対象となるイノベーターは、製品開発予算(Product Development Budget)の最大50%の助成金を受けることができ、1申請者あたり上限は25クロールルピー(約261万米ドル)とされています。助成金はマイルストーン方式で支給され、プロジェクトの実施および監視は、現行のiDEXガイドラインに従い、防衛イノベーション機構(DIO)がパートナー・インキュベーターを通じて実施します。
Q31. 国産化必須品目リスト(Positive Indigenisation List)とは何ですか。また、インドの製造業者にどのようなビジネス機会を創出しますか?
国産化必須品目リスト(PIL)は、防衛分野のシステム、サブシステム、アセンブリ、部品、原材料などを対象としており、国産化の推進および輸入依存の削減を目的として、政府が定めた指定された期限以降、これらの品目を国内供給源からのみ調達するものです。一度ある品目がPILに掲載されると、通知された期日以降、当該調達機関によるその品目の外国供給源からの調達は制限され、適用される調達手続きおよび技術要件への適合を条件として、インド国内メーカーからの調達が義務付けられます。
PILは、防衛公共部門企業(DPSU)が調達する品目については国防生産局(DDP)によって、また軍が調達する品目については軍事担当省(Department of Military Affairs)によって、それぞれ個別に通知されます。現時点においては、DPSU向けに合計5件のPILが通知されており、5,000点以上の品目が対象となっています。また、軍向けにも5件のリストが通知されており、高度に複雑なシステム、兵器、センサー、弾薬などが含まれ、それぞれ段階的な国産化の期限が設定されています。PILに品目が含まれることにより、当該品目について国内産業における明確かつ保証された需要が生まれます。
Q32. 技術開発基金(Technology Development Fund)スキームとは何ですか。また、防衛技術の開発において産業界をどのように支援するものですか?
技術開発基金(Technology Development Fund, ”TDF”)スキームは、防衛省(MoD)が国防研究開発機構(DRDO)を通じて実施する補助金プログラムです。Make in India政策の一環として、先端的防衛技術およびデュアルユース技術の開発に取り組む中小零細企業(MSME)、スタートアップ、学術機関を特に対象として支援することを目的としています。本スキームにおいては、DRDOのTDFガイドラインに基づき、開発費用に対して助成を受けることができ、通常、プロジェクト費用が10クロールルピー(約104万米ドル)以下の場合は最大90%が補助されます。また、10クロールルピー(約104万米ドル)超から50クロールルピー(約521万米ドル)までのプロジェクトについては、一般に最大70%が補助され、プロジェクトの総額は50クロールルピー(約521万米ドル)を上限とし、開発期間は通常4年を超えないものとされています。
本スキームは、民間資金の調達が困難なディープテクノロジー分野や防衛ニーズに対応する優先技術領域の開発を促進するものであり、2024年12月時点で総額約335クロールルピー(約3,492万米ドル)規模の79件のプロジェクトが承認されており、さらにディープテックおよび最先端プロジェクト向けに500クロールルピー(約5,212万米ドル)の追加資金枠が設定されています。
Q33. 防衛産業回廊(Defence Industrial Corridors)とは何ですか。また、どこに位置し、区域内に拠点を設立する企業にはどのような優遇措置がありますか?
インドは、国産防衛製造の促進および国家防衛生産エコシステムの強化を目的として、2018~19年度連邦予算(Union Budget 2018-19)において発表された2つの専用防衛産業回廊を設立しています。防衛産業回廊は、ウッタル・プラデーシュ防衛産業回廊(Uttar Pradesh Defence Industrial Corridor, “UPDIC”)とタミル・ナードゥ防衛産業回廊(Tamil Nadu Defence Industrial Corridor, “TNDIC”)の2つで構成されます。UPDICはアグラ、アリーガル、ジャーンシー、ラクナウ、カーンプル、チトラクートに拠点を有し、TNDICはチェンナイ、コインバトール、ホスール、サレム、ティルチラーパッリに拠点を有しています。
2025年10月時点で、UPDICおよびTNDICは、約9,145クロールルピー(約9億5,334万米ドル)を超える投資を誘致しており、289件のMoU(覚書)が締結されています。これにより、約66,423クロールルピー(約69.2億米ドル)の潜在的な事業機会が創出されています。両回廊におけるプロジェクトの実施は、国防生産局(DDP)のもとに設置された委員会によって監視されており、実行にあたっては各州の指定ノード機関(state-level nodal agencies)が責任を担っています。
防衛産業回廊内に拠点を設立する企業に対するインセンティブは州ごとに異なり、各州の産業政策および防衛産業政策に基づいて運用されています。ウッタル・プラデーシュ州およびタミル・ナードゥ州における制度の概要は以下のとおりです。
- ウッタル・プラデーシュ州では、同回廊はウッタル・プラデーシュ高速道路産業開発公社(UPEIDA)をノード機関として実施されており、6つすべてのノードにおいて優先的な用地割当を提供しています。また、オンライン統合プラットフォームNivesh Mitraを通じたワンストップでの承認・許認可手続きが整備されています。さらに、2024年ウッタル・プラデーシュ航空宇宙・防衛ユニットおよび雇用促進政策(Uttar Pradesh Aerospace & Defence Unit and Employment Promotion Policy, 2024)に基づくインセンティブとして、土地および資本補助、土地取得・リースに関する印紙税免除、輸送補助にくわえ、研修、品質認証、特許取得および共通施設センターの支援などが、適格性に応じて提供されます。
- タミル・ナードゥ州では、同回廊はタミル・ナードゥ産業開発公社(TIDCO)をノード機関として実施されています。同州の2022年タミル・ナードゥ航空宇宙・防衛産業政策(Tamil Nadu Aerospace & Defence Industrial Policy, 2022)に基づくインセンティブとして、工業団地における円滑化された用地割当、資本補助および土地関連補助、印紙税の優遇措置、電力税の免除、研修および技能開発補助、認証費用の払い戻し、ならびにワンストップ承認制度などが、関連産業政策の枠組みに基づき提供されています。
Q34. 防衛分野における生産連動型インセンティブ(Production Linked Incentive)スキームは存在しますか。また、その主な適格要件およびインセンティブ構造はどのようなものですか?
現時点では、防衛製造業全体に適用される専用の生産連動型インセンティブ(Production Linked Incentive, “PLI”)スキームは存在しません。インド政府は閣議(Union Cabinet)承認に基づき14の特定分野にのみPLIスキームを承認しており、防衛製造業はその承認対象分野には含まれていません。なお、PLI枠組みのなかで防衛関連として対象となっているのは「ドローンおよびドローン構成品(Drones and Drone Components)」のみであり、これは14の通知済みPLI分野のひとつです。したがって、防衛製造に関しては通知済みのPLIスキームが存在しないため、PLI枠組みにおける分野別の適格要件、インセンティブ率、投資基準またはインセンティブ構造は適用されません。
防衛製造業はPLIではなく、以下を含む非PLI型の政策手段によって支援されています。
- 2020年防衛取得手続(DAP 2020)に基づく調達優先措置であり、国産設計・開発・製造された防衛製品を優先的に取り扱うもの
- 国産化必須品目リスト(PIL)として国防省(MoD)により通知されるもので、特定の防衛品目について国内調達を義務付け、通知された期限以降に輸入禁止措置を課すことを含むもの
- 防衛卓越性のためのイノベーション(iDEX)およびiDEXによる革新的技術開発の推進(ADITI)スキームに基づく革新連動型の助成支援であり、防衛・戦略技術の開発を目的とするもの
- ウッタル・プラデーシュ州およびタミル・ナードゥ州の防衛産業回廊において提供される州レベルの財政的・インフラ的インセンティブ(上記Q33参照)
防衛製造業に関する個別のPLIスキームが所管当局により明示的に別途通知されるまでは、PLI枠組みは通知済みのドローンおよびドローン構成品のカテゴリーを除き、防衛製造業には適用されません。
2026年防衛取得手続案(DAP 2026)
Q35. 2026年防衛取得手続案(Draft Defence Acquisition Procedure 2026)がパブリック・コンサルテーション(意見募集)のために公表されています。同案はどのような主要な改革を提案しており、それらは2020年防衛取得手続(DAP 2020)とどのように異なりますか?
国防省(MoD)は2026年2月10日、DAP 2026をパブリック・コンサルテーションのために公表し、利害関係者からの意見提出期限を2026年3月3日までとしました。現時点においては、DAP 2026は正式に通知・施行されておらず、引き続きDAP 2020が現行の運用枠組みとなっています。DAP 2026は、自立強化、取得期間の短縮、ならびに国内防衛産業基盤の深化を目的とした構造的および手続き的改革を提案しています。DAP 2020との比較における主な変更点には、以下が含まれます。
- 調達カテゴリーを5つから4つに削減し、取得枠組みを簡素化するとともに、国産設計・開発・製造されたシステムへの優先方針を強化するもの
- 「国産設計(indigenous design)」の定義をDAP 2026において明確化し、アートマニルバール・バーラト(Aatmanirbhar Bharat)の推進を図るもの
- インド製設計・開発・製造[Buy (Indian-Indigenous Design, Development & Manufacture)]カテゴリーにおいて、国産化比率(IC)を50%から60%へ引き上げ、さらなる現地化促進のインセンティブを付与するもの
- サービス側の品質要件(Service Qualitative Requirements)の確定および試験(trials)の監督に、専門分野の専門家(subject matter experts)を関与させるもの
- 2つの新たな取得手続の導入:(i) 長期一括取得(Long-Term Bulk Acquisition)により、産業界に事前の需要見通しと生産計画の安定性を提供するもの、(ii) 低コスト資本取得(Low-Cost Capital Acquisition)により、低コストかつ技術変化の速い装備品の迅速調達を目的とするもの
- 装備品の技術成熟度レベル(Technology Readiness Level)に基づく分類の導入
- 2段階試験制度の導入およびファストトラック取得手続き(Fast Track Procedure)の改善を行い、新興技術(emerging technologies)や短い開発サイクルを伴う調達に関して、より広範な権限委譲を実施するもの
- 試験評価に合格したすべてのベンダーに対する補償の導入
- 国防研究開発機構(DRDO)プロジェクトにおける開発兼生産パートナー選定プロセスを見直し、公平な競争環境(level playing field)を確保するもの
- Make および防衛卓越性のためのイノベーション(iDEX)プロジェクトを取得ルートとして更新し、スパイラル開発および5年間の確実な調達発注を組み込むもの
- サービス側が品質保証(QA)試験の方式をより柔軟に選択できるようにし、調達期間の短縮を図るもの
- 情報提供依頼(RFI)段階からのスケジュール管理を強化し、並行計画を通じて取得サイクル全体の短縮を図るもの
全体として、DAP 2026は自立(self-reliance)の強化、調達期間の短縮、およびインドの防衛産業エコシステムの強化を目的として設計されており、同時により強固な国産防衛製造基盤の構築、輸入依存の低減、ならびに防衛分野におけるインドの世界的リーダーとしての地位確立を目指しています。これらの目的は、調達プロセスの合理化、国産調達の拡大、国産設計への一層の重点化、および簡素化された取得枠組みにおける新たな調達メカニズムの導入を通じて達成されることを意図しています。
寄稿者:
著者:Souvik Ganguly、Nishant Bajoria
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法令および規制上の参考文献
本FAQは、以下の主要な法令・制度等を参照して作成されています。1959年武器法(Arms Act, 1959)、2016年武器規則(Arms Rules, 2016)、1951年産業(開発および規制)法[Industries (Development and Regulation) Act, 1951]、2020年防衛取得手続(Defence Acquisition Procedure 2020、改正を含む)、2026年防衛取得手続案(Draft Defence Acquisition Procedure 2026、2026年2月にパブリック・コンサルテーションのため公表、現時点では未施行)、2023年対外貿易政策(Foreign Trade Policy 2023)、DGFT通達第31/2025-26号により改訂されたSCOMETリスト(2025年10月23日発効)、2020年統合FDI政策通達(改正を含む)、1999年外国為替管理法(Foreign Exchange Management Act, 1999)、2019年外国為替管理(非債務性金融商品)規則[Foreign Exchange Management (Non-debt Instruments) Rules, 2019]、2005年大量破壊兵器およびその運搬手段(不法活動防止)法[Weapons of Mass Destruction and their Delivery Systems (Prohibition of Unlawful Activities) Act, 2005]、2024年国防省(MoD)によるiDEXおよびADITIスキーム・ガイドライン、DRDOによる技術開発基金(Technology Development Fund)スキーム・ガイドライン、および国防生産局(Department of Defence Production)および軍事業務局(Department of Military Affairs)により通知された国産化必須品目リストに基づいて作成されています。
通貨に関する注記:本FAQにおけるインドルピー(INR)の金額には、いずれも、2026年6月3日のRBI参照レート(1米ドル=95.7795ルピー)に基づき換算した、米ドル換算の概算額を括弧書きで併記しています。
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